Column
コラム:シマウマは考える
コラム:シマウマは考える
シマウマは考える Vol.3
「タイムマシンを作りたい」〜“不可能なこと”とはどのようなことなのか〜
アニマル・シンキングのワークショップでは、参加者が様々な課題の解決策を探る。「あなたが、成し得たいこと、解決したいことなど、一見不可能と思われるようなことであっても課題として挙げて下さい。」ファシリテーターの掛け声とともに、参加者の方々が、日頃抱えている課題の中から「本当に達成したいこと」を挙げていく。
「タイムマシンを作りたい」というのは、あるワークショップで参加者の方があげた課題の一つ。今でも世界の研究者たちが取組んでいる難題に、アニマル・シンキングでどう取り組んでいくのか、非常に興味深かった。結論から述べると、約3時間後には、この参加者の方は納得できる解決策を持ってワークショップの会場を後にしたのである。
どのように解決策を導き出したのか。この3時間の間にスティーブン・ホーキンズの提唱する“時間旅行は不可能だとする説(時間順序保護仮説)”の根幹を揺るがすような理論が確立されたわけではない。また、タイムマシンという料理や模型など、シャレをきかせ何かを作ったわけでもない。
このケースでは、自分の思考の箱から出て「なぜタイムマシンを作りたいのか」を改めて見つめ直すことで、「タイムマシンを作る」ということが、本当に達成したいことの「手段」であることを確認できたことがきっかけになり解決策を導き出すことができたのだ。
この参加者の本当に達成したいことは、「今の自分を変えたい」ということであり、自分を変えるための「手段」が、タイムマシンをつくって過去に遡り数年前の自分に働きかけたいということだったのだ。タイムマシンを作るための解決策にばかりに目がいくと、この課題は「不可能」という域から脱することが出来なかったかもしれない。しかし本当に達成したいことを「今の自分を変えたい」と改めてとらえ直すことによって、選択肢は大幅に広がった。そして他の参加者やアニマル・カード(1)の刺激によって、納得できるいくつかの解決策が導き出されたのである。
「フルマラソンを3時間で完走したい」という課題があった。この課題は、まだジョギングの初心者であれば「不可能」なことであるが、フルマラソンを何度も完走したことのある人であれば「可能」な課題にちがいない。また、課題を達成したいのが「来月」なのか「5年後」なのか、条件でその可能性もかわってくる。人がそもそも持っている「限界」や置かれている事情による「制約」で、「可能」にもなりうるし「不可能」にもなりうる。
このケースでも参加者は実行可能な解決策をいくつか持ち帰ることができたのだが、これはご自身の「制約」を確認できたことがきっかけだった。「仕事も辞め、家庭も捨て、すべてをマラソントレーニングのために費やす」という思いもかけないアイデアを他の参加者から提示されたことをきっかけに、「フルマラソンを3時間で」は本当に達成したい事ではあるが、仕事や家庭を維持することはもっと優先順位の高いことであり、「制約」であることを改めて認識したのである。
しかし、興味深いことに、この「制約」が具体的になったことで、それを乗り越えるための解決策も考えやすくなったのだ。「ヘビのカード(2)」によって、「制約」である家族をまきこんで旅行やレジャーにトレーニングを組み込むアイデアが出た。また、「ライオンのカード(3)」によって、職場でレースに参加することを公言し、「仕事」を自分を応援してくれる環境ととらえるというアイデアも出てきた。
ワークショップでは、一見「不可能」であると思われるような課題であっても何らかの解決策が導き出されている。そういったことを何度も目の当たりにしていると、そもそも「不可能なこと」とは、どのようなことを言うのか考えさせられる。思い浮かぶ「手段」があまりに非現実的であるがゆえに、本当に達成したい目的にまでも「不可能」というレッテルを貼ってしまっているのではないか。たくさんの選択肢があることを見逃しているのではないか。
また、どんな条件でも「不可能」なのだろうか。「制約」や「限界」がないと考えたらどうなるだろう。そして、あらためて「制約」や「限界」を確認することができたなら、それらを乗り越えるアイデアが生まれることもある。「そんなの無理」という思い込みが、「不可能」を乗り越えるきっかけを奪ってしまっているのではないか。
シマウマがワークショップの様子をみると、こんなことをつぶやくかもしれない。『選択肢は無限にある。本当に「不可能」であることを確認するためには、それらの選択肢すべてに関して「不可能」であることを確認しなければならない。したがって、「不可能」だと決めることは「不可能」なのだ。』

シマウマは目立つ模様にすることで、捕食者から目立たなくしている。
シマウマの戦略は白黒つけず、「はい」も「いいえ」も両方なりたたせること。
2010年9月21日
カンガ・え・ルー
(1):アニマル・カードとは、アニマルの戦略が明記され発想が刺激されるカード
(2):ヘビのカードとは、「危機をプラスに変える」というヘビの戦略が書かれているカード
(3):ライオンのカードとは、「共通の目標に向けて支持を得る」というライオンの戦略が書かれているカード





