Column
コラム:シマウマは考える

シマウマは考える Vol.4

シマウマの白い縞と黒い縞

 現在、シマウマは3種知られている。アフリカの草原の北には縞模様が細く、縞が80本ある耳が丸いグレービィシマウマがいる。そして生息域の大半にいて一般によくみられるのがグラントシマウマ(サバンナンシマウマ)。しま模様が他の2種類よりも太く25本から30本ある。そして南部の高地にいるヤマシマウマは、脇腹の太いしま模様が43本垂直に並んでいるのが特徴だという(1)。しかし、たまに動物園に行くだけでは、きっとこの区別は不可能で、シマウマは単なるシマウマでしかない。

シマウマ
伊豆アニマルキングダムのグラントシマウマ

 “シマウマにはなぜ縞があるのか?”という疑問への回答はもっと複雑だ。昔から知られていた「縞がカムフラージュの役割を果たし、ライオンなどの捕食者の眼をそらす」という説は、実際の危険にはできるだけ早く逃げるという事実と説明が合わない。そこで、「目の錯覚を利用して、ライオンを混乱させる」という説が出たが、これもライオンは、接近して飛び掛かるときシマシマで混乱し獲物の位置を間違えたりするようなことはないという観察で別の説が必要となった。

 オプ・アート原理というのは、人間の錯視にもとづいて、特殊な視覚的な効果を与えるよう計算された絵画で、広い意味での「だまし絵」の一種。縞模様は、この原理だという説もある。ライオンは、獲物のシマウマの近くに来たとき、白と黒の縞模様に目がくらみ、高速で逃げようとするシマウマに集中できなくなるという説。さらに、シマシマのため、どこで一頭のシマウマが終わり、次のシマウマがどこから始まるか分かりにくく、ライオンを混乱させるという説もある。

オプ・アート
オプ・アートの一例、何に見えるだろうか?

 “シマウマにはなぜ縞があるか?”という疑問の解明には、今まで9つ以上の説があるようだ。最近の説では、「縞模様は視覚的な絆の役目をもつ」と言われている。すなわちシマシマのような刺激的な模様は、群れのメンバーとしての意識を生み、縞はスポーツクラブのユニフォームの模様と同じようなモノだというのである(2)

 シマウマは、白地に黒の縞模様なのか、あるいは逆に黒地に白の縞模様なのかという疑問もある。この疑問もまだ解明されていない。ケニアの首都ナイロビにある国立公園で、縞模様のない真っ白なシマウマの赤ちゃんが見つかり、"シマが無いシマウマ"というタイトルがつけられているが、これは誤りだと主張する学者の意見もある。正しくは"シマだけのシマウマだ“と彼は主張する(3)。現在は、このようにシマウマは、黒地に白縞の動物という説に傾いているという。しかし科学的には、「縞模様はメラニン色素の沈着によるものなのか、すなわち白地に黒縞、それともその沈着が阻害されたことによるものなのか、すなわち黒地に白縞なのか」の解明を待つ必要がある。

 シマウマはどうやって縞模様になるのかという疑問もある。たった一つの細胞である卵から、なぜさまざまな体のパーツが出現してくるのか、ある遺伝子が作用するタイミングや場所をコントロールする遺伝子の存在がその謎を明かしつある。この最新の発生生物学の研究では、白い縞も黒い縞も生命誕生のかなり早い段階のまだ毛皮もできていない受胎後3〜5週間の胚の段階できちんと塗り分けられているようだといい(1)、シマウマとは白縞と黒縞の両方をもつ動物と言えるようだ。

 アニマル・シンキングの英語の商標は“Think Like a Zebra、シマウマのように考えよう”という。シマウマの縞模様のように、白黒をつけることが出来ない状況を作り出す、白黒をつけない解決を探る、逆に白と黒のシマシマを作り棲み分ける、白黒をつけようと迫る、解けない矛盾を受け入れるなど多様なアイデアを考え出せるけれど、“縞の物語”は奥が深く、物事は簡単ではなさそうだ。

ワークショップ風景
縞模様に囲まれてのワークショップ風景

2010年10月15日
パックラット

(1):「アニマルウォッチング」デズモンド・モリス、河出書房新社
(2):「シマウマの縞 超の模様」ショーン・B・キャロル、光文社
(3): 「ニワトリの歯」スティーブン・J・グールド、早川書房