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コラム:シマウマは考える
コラム:シマウマは考える
シマウマは考える Vol.6
「直観」を活かす
歴史を変えるような発明や発見、世界を大きく動かすような成功の陰には直観的なひらめきがある。イノベーションが求められている今、論理的な思考の繰り返しや多くのデータ分析では導き出されない直観的なひらめきが、飛躍的な進歩を生み出すものとして見直されている。
しかし、課題の解決方法や新規の企画を提案するときに、その根拠を「突然ひらめきました。」「私の直観です。」といっても、その案が採用されることは稀だ。そもそも私たちの頭の中に突如沸き出す「直観」は信じて良いものなのか、「直観」は価値のあるものなのだろうか。
直感(gut feeling)とは、「進化した知的能力と環境に根差した無意識の経験則に基づいて、すばやく意識にのぼる。」(1)ものであり、それが妥当なものか否か無意識に素早く評価した結果、直感は直観(intuition)となる。人類の進化の過程の中で身に付けた知的能力や、個々人が培った経験によって、特定の場面で無意識的に行っているあらゆることが「直観」といえる。これは食べられるものか、危険な場所かどうか判断する。また、初めて操作する電化製品であってもなんとなく使い方がわかって自然に手が動く、目の前の人の表情や雰囲気からその心理状態を察知して話し方を変えるなど、私たちが様々な場面で動作一つ一つを考えず動くことができるのは、誰もが日常的に「直観」を使っているからだ。
この「直観」が経験によって研ぎ澄まされると“専門家だけが持つ直観”となっていく。
心理学者ゲーリー・クラインは、兵士、消防士、救命救急センターの看護師といった瞬時の判断が求められる専門職に就く人々の行動と意思決定の方法を研究した。その結果、専門職の人々は問題に直面した時、あらゆる選択肢の中からただ一つの選択肢がひらめき、直観的に意思決定していることを明らかにした。
この「直観」は、直面した状況を総合的に判断し、過去の経験との間に何らかの類似点を探し出して瞬時に浮かぶものだ。むしろ、議論のために言葉で表現し、論理的に思考すると、その過程の中で洞察力が鈍くなり好ましくない選択肢を選ぶことも指摘されている。(2)
経験に基づく「直観」は過去と類似した状況下で作用し、物事を効果的かつ迅速に処理するためには非常に有効だ。しかし一方でこの「直観」は、取り巻く環境や状況そのものが変わっていることに気づかず同じパターンで導き出すと、時として「先入観」や「固定化された思考」となることもある。経験を活かすことができない未知の世界や、新しい何かを創造している過程での「直観」は、異なるプロセスで導き出す必要がある。
マイクロソフトを創業したビル・ゲイツとポール・アレンは、街で偶然雑誌の表紙の写真(小型コンピュータ「アルテア」)を目にした瞬間、ソフトウェアが新しい市場を創造することを直観的に感じたという。(3)彼らは当時、プログラミング技術やビジネス知識に精通した専門家ではなかった。使っていた技術や知識は、当時多くの人が知っているものだった。しかし、たとえ一般的な知識であってもそれを新しい視点で見つめ直し、外部の技術や知識を取り入れそれらを融合し、大きな成功へと導くひらめきを得ることができたのだ。
このような「直観」は、世界を動かすイノベーションや歴史的な発明の中で大きな役割を果たしている。そして、この「直観」は、誰も思いつかなかった新しい発想だけで組み立てられているのではない。多くは、既存の技術やコンセプトを基に思考や議論を繰返しているとき、何かをきっかけにすべての霧を晴らすがごとく頭の中に現れるのである。経験に基づく「直観」との違いは、他者のアイデアや知識も活用し、新しい視点で融合することで生まれること。そしてひらめきは一瞬にして起こるが、その一瞬がやってくるまでに数週間やそれ以上かかる場合があるが、妥協せず思考を繰り返すことだ。
「直観」には、「洞察力によって自身の経験から瞬時に導き出される唯一の選択肢」と「外部の情報も含め様々なものを統合し新たに浮かび上がるひらめき」があるようだ。「直観」の根拠や理由を言葉で説明するのは難しい。しかし、種類の違いを意識し場面に応じて使い分けることで、「直観」は活かすことができる。効果的に選択肢を導き出し、迅速な意思決定ができるようになる。また、既にある様々な要素を、過去の経験や先入観をオフにして新しい視点で見つめ直すことで、イノベーションをもたらす可能性が生まれる。そう考えると、「直観」の価値を信じることができるのではないだろうか。
2010年11月30日
カンガ・え・ルー
(1):ゲルト・ギーゲレンツァー 『なぜ直感のほうが上手くいくのか(Gut Feelings – The Intelligence of the Unconscious-)』小松敦子訳,インターシフト
(2):マルコム・グラッドウェル『「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』沢田博・阿部尚美訳、光文社
(3):ウィリアム・ダガン『戦略は直観に従う(Strategic Intuition)』杉本季子・津田夏樹訳,東洋経済新報社





